鳥獣戯画がやってくる!
もうすぐ上野の東京国立博物館で鳥獣戯画の特別展が
4月28日から6月7日まで開催されます。
このHP、フラッシュ(動いている絵)が魅力的!!
□鳥獣戯画とは
ご存知の方も多いでしょうが、
京都の高山寺に伝わる国宝の絵巻物で、正式名称を「鳥獣人物戯画」といいます。
甲乙丙丁の4巻で構成されていて、ウサギやカエルで有名なのは甲の絵巻です。
私が小中学生の頃は、後鳥羽上皇が描いたと言われていましたが、
各巻の絵柄や年代が異なることから、現在は高山寺のお坊さんたちが描いたものではないかと
言われています。
誰が何のために描いたのか、有名な割には謎が多い絵巻です。
甲・丙巻が東京国立博物館、乙・丁巻が京都国立博物館で保管されているので
去年から京都と東京で協力して鳥獣戯画展を開催しているようです。
□鳥獣戯画の魅力 漫画の原点
擬人化された動物の可愛さが、何よりの魅力です。
Tシャツや茶碗など、今でも鳥獣戯画のグッズは人気です。
最近ではコーヒーショップのタリーズ(手ぬぐい)を見つけて
関連のなさにびっくりしました。(つい買ってしまいました。)
この鳥獣戯画の魅力は、キャラクターがかわいいことと、動きを感じるところでしょう。
「日本最古の漫画」と言われるだけあって、相撲でウサギに勝ったカエルが
叫び?気炎?を上げているところはとてもユーモラスです。
他にも、ウサギの後ろから恐々と猫を除くネズミたちなど、ストーリー性を感じる
絵がたくさんあります。
こんなのとか↑ こんなのとか↑
偏見ですが日本画というと場面を切り取ったような静かな絵が多いなか、
鳥獣戯画の登場人物たちは、とても楽しそうに見えます。
そして、場面が変わる時には「もや」を発生させるという魅力的な演出を使って
見ている人を、次の展開へ誘います。
見る人を意識した描き方に、誰がだれのために描いたのか気になります。
平安時代が終わり武士が台頭し始めた血なまぐさい時代の幕開けへの風刺
なのか、仏教の説話なのか色々説はありますが、依然謎に包まれています。
□鳥獣戯画が当時の世界を語る
鳥獣戯画は当時(12世紀 – 13世紀平安時代末期から鎌倉時代)の
生活の様子を垣間見せてくれます。
おそらく庶民が楽しんでいたであろう相撲・碁・田楽(踊り)などの娯楽の様子や、
おそらく宮中行事だったであろう流鏑馬や賭弓(のりゆみ。宮中行事の一つで
賞品をかけて弓で勝負する)の様子など、
当時は高かったであろう身分の垣根を、飛び越えて描かれています。
また多くのお坊さんに扮する動物たちの姿が描かれています。
鳥獣戯画にでてくる動物たちは、身分に関係なく楽しそうです。
上の画像は、法会を終えてほっとする猿の僧侶にお礼の品を運ぶウサギです。
虎の皮を持つ冠をかぶったウサギがいますが
絵からは当時の日本には虎の皮は入っていたようですね。
けれど、下の画を見る限り生きた虎は入ってきていなかったようです。
ずいぶんと胴の長い虎です。
□鳥獣戯画の魅力 丙巻 人間の登場
丙巻になると、遊びに興じる人間たちが登場します。
制作時期も1200年ほど時代が下ると言われていて、
動物たちが主人公だった甲乙巻とは、ガラッと絵が変わります。
これは、すごろく遊びをしているところです。
賭けに負けて丸裸にされた男の元へ、赤ちゃんが這いより
その後ろに何とも言えない表情の妻が 膝を抱えて座っています。
いつの時代も、賭けに負けるオトコの妻は大変そうです。悲壮感がすごい。
この巻の面白いところは、どの絵も遊んでいる大人のそばには
子供たちがいることです。
遊びも親から子へと引き継がれていく、親子関係の近さを感じます。
□鳥獣戯画の魅力 丁巻
丁巻は、最初から最後まで人間のみが登場します。
(丙巻は後半、また主人公が動物になります。)
鎌倉時代に入ってから描かれたと言われていて、丁巻に負けずガラッと絵柄が変わります。
薄墨で太くさらりとラフに描かれています。
この絵は、験比べ(占いのようなもの)が行われている場面で、
修験者が描かれています。
修験者は髭が生えてボサボサで、鼻が高くて天狗のようです。
山伏・修験者は天狗という妖怪のルーツと言われているので
この時代には、修験者=天狗の認識があったのかもしれません。
□鳥獣戯画の魅力 模本
鳥獣戯画は、一部が失われています。
しかし、模本というものが存在し、色々な人が鳥獣戯画を写して現在に伝えています。
長尾家に伝わる長尾模本・狩野探幽が長尾模本を写した狩野縮図・
住吉家に伝わる住吉模本などとてもたくさんの模本や模本の写しがありますが、
それぞれの個性があって魅力的です。
個人的には田崎草雲のアレンジがかわいらしくて好きです。
以前、紹介した河鍋暁斎も鳥獣戯画が好きでした。
今回の展覧会でも様々な鳥獣戯画が展示されると思います。
ぜひ足を運んで、自分だけの鳥獣戯画の楽しみ方を見つけてみてください。
ご高覧に感謝します☆