【浅間神社】桜の女神 コノハナサクヤヒメのお話
桜の開花が待ち遠しい季節になってきました。
今日は桜の女神コノハナサクヤヒメの話をしようと思います。
□桜の女神 コノハナサクヤヒメ
サクラの語源は「木花咲耶姫 コノハナサクヤヒメ」から来たと言われています。
開花した木の花(桜)の女神で、美と短命の象徴です。
ある時、アマテラスオオミカミの孫神で、初めて地上に降り立った天の神
ニニギノミコト(天皇の祖神)という神が、麗しい桜の女神に出会います。
一目ぼれしたニニギノミコトがコノハナサクヤヒメの父神に
コノハナサクヤヒメとの結婚を申し込んだところ 父神はとても喜んで
姉の石長姫(イワナガヒメ)と一緒に嫁がせることにしました。
□姉神 イワナガヒメ
イワナガヒメは、岩石や大地の女神で醜さと永遠の象徴です。
その醜さときたら、一目見た時からニニギノミコトが恐れおののくほどで
「不細工すぎて怖い!!かえれ!」
すぐさまイワナガヒメを父神の元に送り返し、ニニギはコノハナサクヤヒメと
一夜の契りを交わします。
父神は姉神が返されたことをひどく恥じて、ニニギノミコトに呪いを吐きかけます。
「娘二人を嫁がせたのは、イワナガヒメがいれば雪が降り、風が吹いても
いつまでも岩のごとくに天の神(ニニギ)の御子の命は続き、
コノハナサクヤヒメがいれば、桜の咲くがごとく栄えたはずなのに。
コノハナサクヤのみ留め置かれたなら、あなたの御子は桜のごとく散りましょう。」
そうして、天皇の寿命は命は永遠ではなくなったそうです。
後日、この気の毒なイワナガヒメは無事に英雄スサノオノミコトの息子と結婚します。
□歴史に残った迷言 ニニギノミコト
ニニギノミコトとの一夜の契りで、コノハナサクヤヒメは妊娠しました。
妊娠を告げられたニニギは言い放ちます。
「えー。あの一回で?おれの子じゃないよ。そこらの地上神の子じゃないの?」
最低ですね。
当然、コノハナサクヤヒメは怒り狂います。
「もし地上神の子なら無事には生まれません。あなたの子なら無事に生まれます!」
と誓約の言葉を口にし、小屋を建て、土壁で周囲を塗りふさぎ
出産の時には小屋に火を放ちました。
燃え盛る小屋のなかで、コノハナサクヤヒメは無事に3柱の神を生みました。
不細工は認めないだの、浮気を疑うだの、清々しいほどのクズっぷりです。
天皇の祖先なのに、歴史書に残ってて大丈夫なのでしょうか。。。
□安産・子育て祈願の浅間神社(せんげんじんじゃ)
コノハナサクヤヒメをご祭神として祀るのは
なんといっても富士山をご神体とする富士山本宮浅間大社が有名ですが、浅間神社自体は
各地に約2000社ほどあると言われています。
ほとんどが主祭神としてコノハナサクヤヒメを祀っているところに、
イワナガヒメを合祀している形になっています。
そして、富士山の女神がコノハナサクヤヒメと言われていますが、
おそらく富士山はもともとは、富士山自体がご神体だったのが時代が下って行くうちに、
コノハナサクヤヒメと一緒になったと思われます。
平安時代には「浅間神」として書物にでてきてから、鎌倉時代から戦国時代にかけて
公家や戦国武将たちの信仰が厚かったことからも、桜の化身のザ・女神!が
富士山浅間大社の祭神であったとは思えません。
勝手に予測をすると、安定してきた江戸時代に起きた宝永の大噴火(1707年)の時に
火中出産に成功した女神に、噴火する富士山を抑えてもらえるよう祈願したのかも。
安産・子育てのご利益があるそうです。
コノハナサクヤヒメの別名である、神阿多都比売(カムタツヒメ)は隼人(九州の人たち)の
一族の氏名だと言われていて、もともとは九州(鹿児島)の有力部族だったのでしょう。
宮崎や鹿児島にもコノハナサクヤヒメゆかりの神社がたくさんあります。
詳細はwiki「主な神社」へ
□恋愛成就の浅間神社(せんげんじんじゃ)
一方のイワナガヒメはというと、単体で祀られている神社が少数です。
単体で祀られているので有名なのは、雲見浅間神社というところです。
烏帽子山という山の上に神社があるのですが、
江戸時代の国学者 本居宣長の『古事記伝』には、
「美人の妹(富士山)に嫉妬した醜女の姉(烏帽子山)が雲見に逃れて
小さな岩山に祀られ、優しい妹は姉を心配して背伸びをして捜したので
ますます背が高く美しくなった」との伝説が記されています。
…イワナガヒメ どこまでも醜女(しこめ)キャラ。
個人的に面白いのが、貴船神社で縁結びの神として祀られていることです。
「不細工は帰れ!」と心無い仕打されたことを嘆いて、「縁結びの神として良縁を授けん」
ということで、貴船で恋愛成就を叶えてくれています。
が。
貴船神社は、丑の刻参りで夜中に藁人形に釘を打ちつけることで有名な場所です。
依然行った時も、大きな杉の木に人形が打ちつけられていたので、現役のようです。
丑の刻参り自体は室町時代に成立した能の演目「鉄輪(かなわ)」の話なので、
イワナガヒメが祭神になったこととは、たぶん関係ないとは思いますが
『日本書紀』では妊娠しているコノハナサクヤヒメをイワナガヒメ呪詛していた
という記述もあり「貴船神社のイワナガヒメによる縁結び」には 妙な迫力を感じます。
□おわり
桜の女神の神話というと、華やかそうなのに
思いのほか、誰も幸せになれていない話でした。
ふと詣でた貴船神社でイワナガヒメに出会う恐怖。
ちょっと知っているとちょっとたのしい神話とか昔話を
これからもちょくちょくご紹介しようと思います。
ご高覧に感謝します☆